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最高裁判所第二小法廷 昭和42年(オ)348号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人徳田敬二郎、同徳岡一男、同秋山彰三の上告理由第一点について。

被上告人(当時の所轄は、旧陸軍省)と上告人の先々代亡渡辺利吉との間に本件各土地につき売買契約が成立し、右各土地の引渡がされ、売買代金の支払いがなされたことについての原判決の事実の認定は、その挙示する証拠関係、事実関係から正当として是認することができる。

また、右売買契約の成立により本件各土地の所有権は被上告人に移転したものとする原判決の判断は、その確定した事実関係に基づき正当として是認することができる。

原判決に所論の違法はなく、論旨は、独自の見解に立つて、適法になされた原審の証拠の取捨判断、事実の認定、それに基づく正当な判断を非難するに帰し、採ることができない。

同第二点について。

本件売買契約が締結された明治二三年当時における法制の下においても、登記は、公示方法に過ぎず、所有権移転の要件ではないと解すべきであるとする原判決の判断は、正当として是認できる。原判決に所論の違法はない。

論旨は、独自の見解に立つて、正当な原判決を非難するに帰し、採ることができない。

同第三点について。

本件は、民事上の売買であつて、旧土地収用法に基づく公用徴収でないことは明らかであるとし、同法の適用のあることを前提とする上告人の主張を排斥した原判決の判断は、その確定した事実関係のもとにおいて、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はない。

論旨は、独自の見解に立つて、正当な原判決を非難するに帰し、採ることができない。

同第四点について。

本件記録を検討しても、被上告人の本訴請求をもつて信義誠実の原則に反し、権利の濫用にあたるとすることはできない。

権利濫用に関する上告人の抗弁を排斥した原判決の判断は正当として是認できる。

原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立つて正当な原判決を非難するに帰し、採ることができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 色川幸太郎)

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